流れるような雲

思ひわびけふも見上げる雲の中のいちばん高い雲


高橋元吉という詩人が、昭和六年ヨーロッパに旅立つ彫刻家の
高田博厚に送ったという詩
このすがすがしい境地を、少しでもかいまみたい、自分の気持ちとして
感じたいなどと思ったことがあった


今日の夜明けの風情は、雲が横に気持ちよく流れて、秋というより
初冬の、寒さにむかうぞという透明感やきびしさを感じる空
どこまでも、見通せてしまうような、ごまかしのきかない
世界におまえは生きてるぞといわれてるような、ぴんとした
空気。


アートの世界がときに、共鳴できたと思えるように
感じられるようなことがある
安曇野の池田の丘からみた、風景を山下大五郎が描いた絵を
みて、ほわーっと心に届いてきたり
萩原碌山の「女」、佐藤忠良の帽子シリーズなどに感じる
生き方、女性の愛し方
少しだけ共有できたことでも、その相手の感じた世界は
広く、高く、自分の生き方を鼓舞するのに
感じられるエネルギーは、はっとするものがある


雲を見ること、その美しさを感じること
今年の9月に燕岳に登って、雲海のむこうから上る朝日が
目に飛び込んできたとき、ここへ来て本当によかった
そして、まだまだしろうとだけど、夫婦で山登りをするような
ことができて、そうしたことをしてる自分に
満足したのだった


美しいことが、エネルギー、そう生きるエネルギーに
なることを感じた一瞬だった