永井路子

永井路子という歴史小説家が好きだ
有名なところでいうと、NHK大河ドラマ、「草燃える」の
原作者。
私の最初の永井の文章との出会いは、父がもっていた
鎌倉の名所を案内するような正方形の形をした本があり
その巻頭言ともいうべき文章を永井が書いていて
印象にのこった
そのなかで、例えば先日倒れたいちょうの老木に公暁
隠れて実朝を切るのだが、その黒幕は北条氏という見方が
多いなかで、永井は三浦氏であると推論する。そのきりかたが
面白い


鎌倉時代室町時代平安時代とそれぞれ、わかりやすい
切り口で印象的な人物をとりあげて、小説という形をとって
歴史の面白さを味あわせる。おそらく膨大な資料を調べたんだなと
感じるリアリティ。このリアリティはおそらく
司馬遼太郎のそれと、劣らない。いいえしろうとには
そういうふうに見える


ちょうど、大学を卒業するころに、書き下ろしの小説がでて
読んだ。「あかねさす」
舞台は現代で女子大の4年の女性が、自分の進む道をみつけていく
というストーリィ。万葉集の詩から名前をとってもらい
旅先で、名前がもとの縁で不思議な出会いがあってと
進む
こうして、読んでいくと、さきほどの資料のところでも
ふれた、司馬遼太郎と「ストーリィテラー」物語の
展開力という意味でも勝るとも劣らない


読み返して、自分で自分に眼が開かれる気がする
主人公の吉野や明日香での行動にひきよせられるように
自分も明日香に何度かいって、甘樫の丘から大和三山
ながめて、このあかねさすにでてくる、臣下であるはずの
曽我氏の館が、主人である天皇家のある宮を見下ろしてる
こうしたところから、そのときの力関係などが
感じられるというようなことを想像したり
飛鳥寺の飛鳥大仏の顔と、興福寺宝物館にある
山田寺の仏頭を比べてみたりしたのだ


思い出してみると、このあかねさすを読んで
少し歴史の楽しみ方、旅の楽しみ方を知った気がする
いまの旅好きは、こんなところからきていたのだと
思う
歴史のことで、なかのいい人と、例えばさきほどの
いちょうの公暁の話などの解釈などをいってみるのは
楽しい。相手も詳しければなおいい
この冬はまた、歴史の本に気持ちがひかれそうだ