電車のなかが好き

大学受験のころ、電車の中で英単語とか構文とか「暗記もの」をやっていた
10分、電車にのるとしたら、10個の単語を覚えると決めてやる
暗記というのも、やってみるとトレーニングだということに気が付く
最初10個やるのはきつくても、習慣にすると、数はふやせる


実際電車のなかって、おもしろい。人のなかにはいって英単語を
覚えたりすると、自分は受験生だって気持ちを意識することになる
そのことで、自分のやってることを確認するって意味があるでしょう。
あー、このこと、よく思うのだけど、自分で自分の存在自体を確認する
って大事だと思うのです。けっこう自分で自分のことってわからなくなる
ものだから。


さて、電車のなか、一定の集中してやることには、けっこう向いてると
感じるのです。だから「迷う」ようなこと、今の私でいえば、人事のこと
経営計画など、20分乗ってるとすると、どれかひとつそこで検証しよう
とすれば、できると思うのです。


他人のなかにいて、一定時間なにを考えてもいいという時間、電車のなかという
のは、貴重な空間です。電車はいろんな人が乗ってます。考えがつまったら
そうした人の顔をちらっとみます。そうすることで、考えをシャッフルすることが
できる感じがします


たとえば、年配の方の顔、その顔は、しわに刻まれた、人生の重みといった
ことがある。子連れの方には、いつもエネルギーを感じて、それは自分の
気持ちを前向きにするのに、役立つと感じます。壮年のビジネスマンの
きびしめの顔は、負けたくないと気合がはいります


しわ、のことで思い出すのが、映画監督の大林宣彦さんが、インタビューに
答えて、尾道の映画をとって、地元の人から、尾道のきれいなところだけでなく
なんというか、きたない?というか決して、風景がきれいでなく
いわば、人間でいえばしわにあたるところも、いっぱいとっていて
なぜ、おるのか?といわれたとき、しわこそ、いいと思ってとったという
回答をしてるのを見た


実際、かつて、さびしんぼうや、転校生がヒットしたころ、尾道には
たくさん映画ファンが訪れて、その美しいたとえば海がみえる風景
夕陽の風景もみるけれど、坂の途中のなんでもない、のきさきだとか
自分なりの好きなところをもっていて、それこそくまなく歩き回って
そうしたところを、見ていったという


人間のしわって、若いときにはわからなかった、味につながるように
思う。できればそんな味をもつ、いい大人になっていきたいと思う
そんなことを思いながら、電車でいい顔の方にあうのは、楽しい
町が、しわを作っていくように年月がたっていくというのも、なんとも
いい表現だし、そこにずっといたいような、いとおしさにつながっていく


生きていくってことは、当然ながら「楽しいこと」がずっと続くってことは
まあ、ありえない。けれど、苦しいことも、悲しいことも時間を経たら
語れるような、いいえやさしい顔で語れるような、そんなふうな、年月の
過ごし方ができたら、素敵だ