黒田清輝

東京国立博物館に、黒田清輝の回顧展をみてきました


最初にみた、婦人像(厨房)にまず、目がくぎづけです
モデルは、滞在したグレー・シュル・ロワンの家の娘
マリア・ビョーとありました
この女性が、美しい。きっとリアルなその人も美しいのでしょう
そして、光をたくみに使った表現で描かれた、この絵。どちらかと
いえば、地味と最初思える色彩なのですが、みてるうちに
髪の毛、手の表現の正確さに見入ります。


この一枚で、これから見る絵への期待が高まります


ラファエル・コランという、画家に師事したといいます
この画家がまた、美しい女性像を描いています
つい、師の影響というのを、意識してしまいます
この回顧展も、その趣旨で、師弟のあいだの、共通点などを
みてるこちらにつたえてくれる、意図が感じられました


ラファエル・コラン、「フロレアル花月)」という作品と
黒田清輝の、「野辺」、コンセプトが似てると
思いました
見つめていると、それぞれ、女性の美しさを賛美する心が
似てるのかなと、思えてきます


ずいぶん、まえ、アートの作品をみるのを、習慣にしてなかった
ときは、裸婦像を目の前にすると、なかなかじいっとはみれなかった
のを、思い出します。この黒田清輝さんの、生きた、明治、大正は
世間が、まさに裸婦について、表現してるのを、許さない風潮は
相当あったのでしょう。コランも褒めたという、裸体婦人像について
展示するときに、下半身をかくすという、事件があったと
今回の展示にも説明がありました


黒田清輝さんというと、湖畔という作品が切手にもなり
重要文化財で、教科書にもでてるということで、有名ですが
私としては、上記の、「野辺」が気になっていました
今回、みていると、描かれてるのは10代かと思われる
若い女性。緑の草原で、一輪の野草をみつめてる、微妙な
感じです


思うに、おそらくは黒田清輝がもってる、女性へのあこがれ
男性なら思う、少女から大人の女性になる、微妙な年齢の人への
あこがれでしょう。咲きかけた花を愛でるような気持ちでしょうか


ラファエル・コランの作品で今回展示のあったなかに「思春期」というのが
ありました。美しくだけど、どこか不安定で、こわれてしまいそうな
なにかをあわせもっています。同じコーナーに、気品に満ちた
大人の女性を描いた、「ブロンドー夫人の肖像」というのもありました


気品に満ちた、大人の女性と書きましたが、なかなか気品に満ちた・・・
という絵にも、もちろん、リアルな人にも出会えないななどと
思いながら、何年かまえに、ルノアールの作品でそうした
女性に出会えたのを思い出しました


学者が、その論文を書くということに似て
画家が、絵を描くということは、自分の頭のなかをだす
ということですから


こういう説明が、解説のなかにありました
うーん、とうなりましたね
そうだとしたら、本当に画家というのは、自分の生きることとの闘いとも
言えるのでしょうね


いつもながら、作家の生きた、その生き方に心がいく展覧会です
そして、今回、東京国立博物館の企画の意図に、なかなか工夫が
みられて、とても、感心しました
生涯を時系列で説明して、最後に、挑戦したことを、並べています
「昔語り」「東京駅障壁画」「智、感、情」どれも
作家の、思いがほとばしるようです
昔語り、構造画への挑戦
障壁画、リアルに働く人を表現することを、日本の玄関といっていい
東京駅に展示する
そして、謎めいた、智、感、情。
とても、見ごたえがありました