文章の力

仲間と読書会をしていたときに
あるひとりのメンバーが、本は、自分が感情移入できるから
楽しいという面があると、言いました
なるほど、と思う、小説を最近読みました


リーチ先生 原田マハ


沖亀之助なる、主人公(架空の人物)の視線を通して
バーナード・リーチという人物が浮かび上がっていきます
リーチ先生と、亀之助の絆、やりとりが、いとおしくて
リーチ先生の人となりが、すっと、自分に受け入れられていくのを
感じます


原田マハは、作家として大きな存在の、たとえば、モネだとか
ピカソだとかを、実際息をして、個性をもってしゃべる存在として
蘇させることができる、そういった、文章の名手といっていいと
感じます


ジベルニーの食卓で、モネをその娘の視線で、ゴーギャン
ゴーギャンが通った、絵具屋の娘の視線で、こういう人物、
自分のいま、近くにその人がいるように、感じさせる小説です


史実を知るというのは、大事かもしれませんが
研究者になるわけではない、自分たちにしたら
作家が、生きた人間のように、感じられる、小説で
印象を得たほうが、楽しいということがあります


バーナード・リーチでいえば、鳥取県の舩木窯に
お邪魔した時、この部屋が、リーチが気に入って、滞在した
部屋ですよと、通してくれた部屋を思い出したり
京都の河井寛治郎記念館で、リーチ用に大きなふとんが
用意してあって、何度も泊まっていったという話を
本で読んで、その記念館で、しばし、佇んでみたり。


そんなふうに、その人のいた、その空気感を
ちょっと感じてみたいと、やったことのある自分としては
原田の、描きたい、リーチさんの人がらを、追っかけるのは
とても、楽しい、ひとときでした


プロローグで、偶然、リーチは亀之助の息子に出会い
エピローグで、その息子は、リーチをたずねて、イギリス
まで行きます


おそらくは、鳥取の出西窯で、リーチに教えてもらった人の
息子が、イギリスに訪ねて行ったなんてことは、実際あるのでは
ないかって、想像しました


文化を通じて、人と人が絆を感じる
文化を高める役割をし、陶芸に大きな足跡を残した人は
まさに、日本人より、日本人らしい生き方をしたと
言ってもいいと、思います


小説を読んで、その主人公が好きになることは、よくあることですが
ぐぐっと、イメージをもって、バーナード・リーチ
息づいてるのを、感じました