信州の山すそ

上信越道を走り、小諸で降りて、そば七というおそばやさんにてそばをいただいた
三たて、ひきたて、打ち立て、ゆでたて、そばはこの三たてだと、だいたいおいしい
そばが食べられる。このそば七の特徴は、やや太めのそばと、しっかりだしの味がする
つゆだと思う。小諸のかつての本陣だとか素晴らしい古い町屋が並ぶ一角にある
天井が高く、天窓があったり、土間からあがったところの天井には二階のこたつが
あったりして、古いよさがただよう、いい空間だ


そばを食べて、152号線を別所温泉、前山寺のほうに車をすすめる
このお寺のまえに、信濃デッサン館という美術館がある
外観は、安曇野碌山美術館に似て、教会のよう、またつたがからまってるところも
似ている。そこに夭折の画家、村山槐多、靉光、松本俊介という人たちの
作品をみることができる。


これらの作家の名前から連想するのは、州之内徹だ。その著書、気まぐれ技術館には
冒頭に確か靉光の消息の話があった。また仙台ホテルにおける吉岡憲の
作品のあれこれ(これはいま、信濃デッサン館にある、笛吹き)
の話は、なかば、おかしみと自嘲をこめた、文章で語られていて、
おもしろい


州之内さんの語り口は、軽快でいて、実はその文章のために調べたということが
かなりありそうということがうかがわれ、読み返すと面白い
吉岡憲とか松本俊介はけっこうこだわって、調べた画家だと思う。
ページが多くさかれてる


私はひとりのアーティストにこだわって調べるなんてことは、したことがない
ひとつそんなことから、思い出すのは、好きなアーティストの荻原碌山、この人を
ずっと追って、ゆかりの人たちに会っていく大学の先生の本があって、
それはまるで、推理小説を読むように、読めたことはある
スターのように、輝くアーティストは、ふれあった人に結構影響を与えるようで
そのひとこま、ひとこまはとっても興味深い


信州は、何人ものアーティストがひきよせられるように、愛した土地だ
山下大五郎がそうのように、その土地の美しさを一般人に教える
という役割も、アーティストの大切な仕事といえるらしい
その土地からもらった、インスピレーションを、アートにしていく人たち
をいとおしく感じる


思えば、生きるってことは、何かを感じて、それをアーティストなら
「美」に、ビジネスマンなら、ビジネスの価値に、対人援助の仕事を
してる人なら、相手の心が澄んでいく何かの役にたつようにしていくって
ことといっていいのではないか


アーティストの生きた足跡から、生きるエネルギーをもらえるのは楽しい
信州には、そんな足跡をさがせる道がもっともっとありそうだ