手紙

旅先から、友人にはがきを送るのが好きです
旅の1ページを、シーンとして書くのが好きです


自分がいま、どんな気持ちがしてるのか
書くのが好きです
相手に伝えたいという気持ちを、どんな文章、言葉に
しようかって、迷うのが好きです


その理由のひとつめには、そうして、手紙を書きたい
相手のことを、思い出すということが、うれしいのです


きっと、この人は、こんな風景に出会った自分の気持ちを
くみ取ってくれるとか


きっと、あの人なら、旅のハプニングの楽しさを、共有して
くれるにちがいない


そんな連想をして、それをちょっとだけ、はがきに残すのです
もしかしたら、狙いどおりには、相手にそんな連想は
ないのかもしれないんですけど、それはそれでいいんです
伝えようとしてる、自分の気持ちが盛り上がるだけでも
楽しい


最近でいえば、信州新町から眺めた、北アルプスの、雪をいだいた
山々が、まるで、自分を待っていたように思えたなんて
記述を、しています。あの日の北アルプスの美しさは
もうきっと忘れられないくらい、まぶたに焼き付きました


伊賀の窯元にいって、その里山の風景にあこがれ、過ごした時間も
いとおいしいのです。うつわ作りの作家の人の言葉を
いただきながら、飲んだコーヒー。夫婦のあたたかさが
伝わってくる、時間。


加賀の、ここからは、もう舗装した道路はなくなるという場所で
水が流れ、10月だというのに、つくつくほーしを聞いた
山郷にある、窯元では、美しい色彩をまとった、うつわを
ゆっくりみせてもらって、素といっていい、かざらない語りの
作家の思いを、ずっと聞くのが楽しかった


金沢の、街のなかにある、武家屋敷。前田家の重臣の家という
その屋敷は、ものすごく立派な仏壇があり、庭は嗜好をこらした
水と花のある作りがあり、その庭を愛でる位置に、茶室があった
広々とした、というわけではないけど、こんな作りがのちのちの
日本の家屋につながるんだと、感じるそんな空間に
ふれることができた


その感じた、一瞬のシーンを、言葉にすることの
むずかしさ。もちろんなかなか満足するような、記述はできない
そうだから、また描いてみようというのもあるのかも
しれないです


あ、はたと気が付いた。あまり稚拙では、自分でいやに
なるかもしれないですけど、やっぱり、なにか絵でも文章でも
自分でその表現を追いかけるということは、未完成だから
また描こうというのがあるのかもしれないですね


未完成だから、ずっと、まだまだ自分を鍛えようがあって
いいんでしょうね