美を求めて歩く

ひとりの仲間が書いた文章に
奈良、明日香村の甘樫丘に行きたいとありました
甘樫丘にたって、香久山、畝傍山耳成山大和三山
眺めたいというふうに、書いてありました


あることがあって、そのことを、試したくて
一人で、奈良にでかけました
暑い日でした
甘樫丘にたち、解説をみながら、みてみると、なるほど
大和三山がみえるようです
一番近いのは、香久山です
持統天皇の歌を思い出しながら、見ます
もちろん、いまどき衣は干したりしてませんが


旅にでて、だれかが眺めた、景色をなぞってみること
仲間が書いた文章にふれたあと、永井路子の「あかねさす」
という小説から、甘樫丘にたっていたという、蘇我の館
そして、見下ろす位置にある、伝板蓋宮。あれれ、臣下で
あるはずの蘇我の館が、天皇の宮を見下ろす位置にある?
そんな解説を、自分の目で確かめてみようと、また
明日香にでかけたのです


それから、ずいぶん時間が流れたのですね
小説であり、絵、の舞台である場所をたずねてみるのは
楽しいです
もちろん、気に入った絵の場所に行ってみる
というのは、その絵をもっと好きになる方法とも
言えます


信州、松川村に「ちひろ美術館」があります
そのまわりには、岩崎ちひろが、スケッチした場所という
ところを、お散歩できる、道が整備されています


乳川、芦間川、中房川と、周辺の川があって、これらは
やがて、犀川に合流し、千曲川ともであっていくのですが
複合扇状地という、ひろびろとした、土地を形成する
安曇野の、美しい、広い土地を、形作っています


一番近い乳川のほとりを歩いていて、少し下流からちひろ美術館
ほうを、ふりかえると、アルプスの、白馬連峰につらなる
爺が岳をはじめとした、山々が迫ってきます


安曇野の、山をいただいた、この広々とした景色が
よくて、くりかえし行くようになり、時間を忘れて
眺めることがよくあります


山を眺めるというとき、それは、ある間隔を置いて、対面に
ある丘であり、山に登るということが、一番その対象の
山をみるというのに、いいポジションなんだということに
信州をめぐるうちに気が付きました


そのことを、絵で表現し、安曇野の美しさを
もう一度、再発見させてくれたのは、山下大五郎です
山下の回顧展を、北アルプス展望美術館でみたとき、息子の
ひとりが、思い出として、父が信州にでかけるときの
様子を、思い出しますと。父は旅にでるそのときから
絵を描いていたといっていいといった、趣旨のことが
書かれていたように、記憶します


日本には、なんて美しい景色が存在するんだと
ときどき、日本人に生まれてよかったと思う時があります
そういう、感性を持ち続けて、できれば、いっしょに感動
してくれる人とも、共有していければなと、思います