雨の中

雨の中が、いいなと思うのは、木がたくさんあるところではないか
鎌倉の寺で、雨の日がいいなと思ったことは何度もある
あまりはげしい雨のときは、それは大変だけど
しとしと、雨がふってるときに、大きな木のある寺を
あるくのは、なかなかいい


寺を雨がつつむ。それは寺のもつ、静寂という雰囲気をいっそう
くっきりさせる
前に読んだ本に、宗教家が独身が多いのは、結婚が気を散らすからだという
ことが載っていたが、そうまでして
自分と向き合い、自分の精神を高めることに力をそそぐかたがいる
寺というのは、静寂さをもつのだろう


その静寂な空気にふれたくて、鎌倉に何度かでかける
雨がふると、木はその緑をいっそう濃くみせてくれるようだ
その雨にぬれた、木々を見ながら歩くのは、自分の気持ちが
しっとりする
例えば、人とのやりとり、ぎくしゃくしてなんとも気分が悪いというような
ほかには、自分の弱さに気づくときなど、なんと同じことの繰り返しなのか
と、ためいきをついたり
そんなふうに、なにか心がほこりっぽくというか、ひびわれたような気になった
ときは、雨の日のお寺にいってみるのもいいのだろう


そうして、ぎくしゃくしたやりとりは、なにも相手が悪意をもって
そうしたのではないのではないかと気づいたり
同じことのくりかえしという自分の弱さは、まるっきり
同じくりかえしということでもないし、いいえくりかえしできるような
心の状態でいられるということだけでも、それは意味があるなんて
思い返したりするのです


大きな木の近くで、雨をみて、そのしずくがとうとうと
なにもいわずに落ちてくるのをながめているのも
それはそれで、いい時間です