加賀の里山

2年ほどまえに、石川県で陶芸家のご自宅をたずね
はじめて、お邪魔したのに、話し込んだことを
思い出します


その陶芸家さんの自宅は、もうそのいえまでで、舗装した道は
終わり、それから先は、山道になってしまうという
里山のなかといっていいところにあり、目の前には
うぐいがたくさん泳いでる、小川がありました


うちに来たら、水がごちそうなんだけど、あいにく
昨日までの雨で、水はにごってしまっていてね
そんな会話から、はじまり
窓をあけはなって、作品の話、この場所の気候の
話と、いろいろ、聞く事ができました


しばらく話してると、確か10月のはじめだったのですが
つくつくほーしが、鳴きだしたのです。その日は、10月の頭
だったら、たまにある、ずいぶん、気温の高い日でした
作家さんは、こうして、気温があがると、ほろっとめざめるのか
鳴きだすときがあるのね、とつぶやきました


その作家さんの師匠にあたる、陶芸家の話もしました
まっすぐな、線をひく、そのことだけでも、結構たいへんなんですよ
ただ、ひけば、やっぱり趣もなにも、少ない
そうかといって、なにか作為をはじめからすれば
そのわざとらしさが残って、いやらしい


線一本ひくということに、どうしようというとき
その師匠は待っていてくれました
ああいう、鷹揚な師匠だから、つとまったということが
ありますね


そんな、話をしてくれました


場所も、作品もちがうのですが、今年、丹波で訪ねた作家さんの
家にお邪魔した時、加賀の人を思い出しました
やっぱり、もうすぐ、山というところに住んでいて
そんなに近くはないですが、川がありました


自然を感じる場所で、案内してくれました
最初にみせてくれたのは、土、それから窯でした


昨年、備前を訪ねたときに、教わったこと
うつわ、作るのには、基本は材料である、土がとても大きな
要素です。それから、火ですと。


あたりまえといえば、あたりまえなのですが
数十年、土が大事と、備前焼を作ってきた人が
土が大事ですよと、安土桃山時代からつたわるという
壺をみせてもらいながら、語るのを、聞くのは
大事でした


美術館にいき、絵をみて、わかる、わからないという
ことでなく、感じたなにかを、大事にする
ということがあります


そのとき、みせてもらった、壺、うーんと
うなってしまったのですが、その作家は
いやいや、なにか別のものをみたときに、あ、ちがうな
とか思えればいいんですよと、やさしく
ほほえんでいました


どんな道を究めた人でも、似てる、そうした心の高さに
よくひかれます
自分の仕事に誇りと、信念といっていいものをもち
生きるということの、全てをかけて、やってる作家活動
そうなんだけど、他人にはあくまで、謙虚。
そういう境地はまだまだ、ほど遠いのですが
できれば、ちょっとずつ近づきたいものです