小説の楽しみ

河合隼雄先生は、小説、映画を楽しみなさいと
著書のなかで教えます
小説のなかでは、ほんとうに、ある人の生きたその姿
生き方、たとえば困難に出会ってその対応をどうしたのか
そのときの心の動きといったことが、とてもよく書かれてるものがある
と、書きます


河合先生は、カウンセリングで、共感すること
たとえば、年齢、性別、立場、職業といったこと
こうしたことに共通なことがそれなりにあれば、相手のいくつかを
想像したりは、できそうですと。でもまったく違う立場、遠い存在の
ときどうしますか?と投げかけます


そんなとき、ひとつのヒントになるのが、小説ですと
教えます
もっとも、違う立場の人、文章のなかだったりしても
気持ちに添うというのは、簡単ではありませんがね


「レッドゾーン」 夏川草介
この小説で、コロナに対処する医者に気持ち、実際の振る舞いのこと
医者同士におけるやりとりの、なまなましさといったことが
書かれています
このなかで、医者という立場でコロナにどう向かったのかというのを
少し想像することができました。また「プロ」としての
医者がどれだけ、コロナのことが怖いと思ったかといったことも
想像できました


小説は、絵空事を書くんだよね
こんなふうに、言葉にしてしまうと、とっても薄っぺらいですね
小説のなかで、読みたいなだったり、読んでよかったなというのは
もちろん、フィクションでもあるのですが、そのフィクションを
盛り立てる、舞台装置であるところの、人間関係だったり
その主人公なりに、ふりかかる、事件、社会現象(上記でいえばコロナ)
といったことは、相当な現実感がでるような、詳細な事実を盛り込んだ
ものでないと、成り立たないといっていいのではないでしょうか


「大事なことほど小声でささやく」 森沢明夫
でてくるキャラクターごとに、章の主人公となるような手法が
とられてるこの小説。人気漫画家にて、若い女性という
設定の美鈴さん。実際、ジムに通って、その仲間の筋肉の
詳細をみる、またさわるなんてことをして、漫画のリアリティを
作ってると、ストーリィにでてきます
フィクションなんだけど、そのリアルティを支えてる要素というのが
ストーリィのなかで、書かれています


画家が、自分がいいと思った、自然だったり、人物その他対象物の
「本質」を表現するということが、本分であるとしたら
小説家は、いいと思う、キャラクターのやりとり
そのやりとりができる、そうする、そうせざるをえない背景となる
そのキャラクターの人生を、書く、表現する、プロなんだと思います


そうした、アピールを私は受け取って、さて、どう生きるのか
ずっと考え続けたいと、思います