何も教えない

竹橋の近代美術館に、楽家の茶碗の展覧会を見に行きました


美術館に行くときは、よくすることなのですが
「音声ガイド」を借りるのですね
今回もそうしてみました
女優の中谷美紀が、ナレーションを担当し、かつ解説に
当代、楽家当主、吉左衛門が登場します


吉左衛門、利休を語ります


最初は、自分が高校生のころだったと思います
利休に関する記述を読み、利休はいいと思いました
それは、花を活けるなら、野に咲くようにように、活けよという
教えがあるというのですね


それから数年たち、今度は、秀吉政権で、中心にいるという
ことを学びました。この花を活けるという話と
権力の中心にいるということが、どうしても、矛盾、二律相反
のように思えて、自分は違和感をもっていたのですよと


また、時間がたち、自分自身が、作陶するということを
はじめたとき、はたと思ったことがあります
それは、二律相反、矛盾といったことを、自分のなかに
抱える、だからこそ、ものを表現できる、そういうことが
ありうると。

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いったん、解説から離れます
実際、私、長澤も利休は気になる存在です
とかいっちゃって、勉強したというより、NHK大河ドラマのうんちくに
近いのですけど。利休は、確かに秀吉もその存在を頼りにしたと見える
そして、戦国時代から、桃山、また江戸時代と、いわば、殺し合いの
世界の武将から、政治であり、文化を知らないと、生きていけない
武将へ、変化しなくてはならないときに、利休の存在は
言ってみれば、文化を知る、灯台のような存在だったのかと
思い当たります

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もう一回、吉左衛門の、解説に行きます


「一子相伝」の極意といったこと、それは、何も教えないという
ことなんです。私は父から教えてもらったということはありません
おそらくは、楽家、代々、そうだと感じています

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何も教えない。それでいて、楽家は15代、現代まで続いてる
うわ、そんなことが、ありえるんでしょうか


そうと思ったとき、私の頭は、会社の経営ということに
切り替わります
そうなんです、経営ということ、教えることって
できるのでしょうか?


アサヒビールを、再興したと言われる、樋口広太郎氏
銀行にいたときに、秘書室にて教えをもらうべく、そのとき
おつかえした、役員にこっぴどく叱られたという
話が、頭をよぎりました
そういうように、若いときは、おそらく、ビジネスの世界で
細かく、ひとつひとつ、教えてもらうというのは
本当に大事なことですよね


しかしながら、経営に携わるというタイミングになったとき
なにか、あることの決断のしかた、など、教えて
伝わるものでしょうか?


大変そのあたりが、気になりだしています


何も教えない


このこと、しばらくずっと、私の頭の中で
ぐるぐると、まわりそうです