いのくまさん

「いのくまさん」 絵:猪熊弦一郎 文:谷川俊太郎 構成:杉浦範茂


この絵本が好きです
絵本という、メディアと言ってみますが、絵本という形
伝えるための道具、というか触媒、といったことが、とても
好きになっています


絵本では、猪熊さんの初期、自画像であり、身近な人の
ポートレイト、そして、やや抽象っぽい顔、ねこ、鳥・・・
いったん、身の回りにあったおもちゃがでてきて
抽象の絵へ、いざないます


こんなふうに絵本に導かれて、猪熊さんの抽象への進み方
といったらいいか、絵の道をみていくと、まさに「おもちゃ」
みたいな、抽象画の世界を楽しむ、描いていくということが
おもちゃを楽しむと重なってきたのです


これは猪熊さんを、なんか軽く扱うとかそんな意味は
まったくなくて、それより50代以上でなんて
自由、そして、意欲に満ちた、そういう心なんだと
あこがれをもって、みつけるそんな気持ちになります


50代になって、いろいろ、思うところがあって
ヨーロッパをめざした。そしてその途中のニューヨークに
とどまり、そのまま、ニューヨークを拠点に
活動はじめるという・・・
ニューヨークという街の刺激だとか、他のアーティストとの
交流だとかいろいろあった・・・
そして、抽象の世界へ進んでいく


ちょうど、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館をみにいった
そのまえに、笠岡にある、小野竹喬美術館に行きました
そして、今思うと、抽象画に進んだ、猪熊さんと
とてもシンプルな、木を描くようになった小野さんの
気持ちのうえでの共通点みたいなものを、感じるのです


小野竹喬さんの、若いころの大作は、ほんとに、隅から隅まで
といっていい、神経の行き届いたというか、手抜きのない
細かい描写をていねいにする、日本の風景を描いていて
ため息がでるくらいです
こうした、画面いっぱいに細かい作業をしていた
小野さんが、年代があがっていくと、ほんとうにシンプルな
木、枝といったものに、きれいな空を背景として描く
という、これぞ小野竹喬スタイルという絵を描いています


猪熊さんは抽象画へ
小野さんはシンプルな世界へ
小野さんの絵は抽象ではないでしょう
ですが、心の中で、余白をいい感じに作るということを
していたといったらいいでしょうか
シンプルに木を描く、その木のまわりの空はまわりの風景は
自由に見る人が広げていってください
そんなふうな、みていて、こちらの心が自由になっていく
ような、そんな感じがするのです


アートをみるということは、見る側の人がいろいろ
想像していいのだと、思います
そうだから、の、楽しさもあります


猪熊さんの、心の自由さということを、感じられて
よかったなーって思います。現代美術館、ぜひいってほしいな
と、思います。美術館が開いています、そうあなたの
来館をまって、開いている、未来に向かっても開いている
そんなふうに思ったのでした