美術評論家

世田谷美術館 館長の酒井忠康さんの講演を
聞きました


海老原喜之助という、画家の生誕110年という回顧展が
横須賀美術館でありました。
海老原さんと、酒井さんが最初に勤めた、鎌倉近代美術館の
当時の館長の、土方定一さんは親しかったそうです
「ていさん「きのさん」と呼びあったっていたとか
同い年ということもあり、海老原さんが1960年代に
逗子に住んだということもあって、行ききしていた
という話がでました


講演というと、堅苦しいよね、とはじまってすぐ、酒井さんは
いいました。海老原さんに関してしゃべるなら、堅苦しいのは
似合わないよ、と思ってますとのこと。だんだん、興にのるに
したがい、親しみと、興奮と、美術への思いがかさなり
話がとびとびしながら、面白い


これも途中で言っていたのですが、こうして、つまり講演する側と
聴衆(といっても40人ほどでしょうかね)というかっこうをすると
緊張して、よくないね。酒でも飲みながら、どっかの番組で
やってるように、カウンターで、うまいものと酒があって
しゃべらずとも、(ハンドサイン)こんなことして、やってるの
いいね。美術もあれでいけばいいかな


土方さんの著作で、日本の近代美術というのがあって、もとは新書
だったんだけど、文庫で再出版するときに、扉に乗せる絵が
この、「曲馬」です。ぼくが選びました
美術評論なんてしてる人には、その人のした仕事を象徴するような
画家というのがでてくると思っています、土方さんには海老原さん
なんだと思ってます


例えば、時代というのもそうだろうと思うのです
明治であれば、高橋由一の「鮭」です
大正であれば、岸田劉生の「麗子」です


海老原さんの絵は、ポアソニエールという、頭に
ざるをのせて、そこに魚をおき、つまり魚売りの女性の
絵があるのですが、それが、かなり好きになった、州之内徹の
愛憎品だったということがあります


女性遍歴もとても盛んだった、早くいえば、スケベエなおっさんの
州之内さん。どこからか「美しさ」というのを、絵の中に認め
動かない、絵の美しさというこを、愛でるようになって
生きてる女性との関係にくぎりをつけることができた
という、州之内さんのことを書いたエッセイで話がでてきます


それほどまでに、絵を愛せるものか
州之内さんの言葉。この絵を、どうしても手元においておきたい
これ以上の賛辞があるか?ない。と言い切る
そうした、まるで、愛した人を所有したいという、シンプルさを
もって、絵を愛したという話が、心を打ちました


そういう象徴的な絵が、ポアソニエールだと思っていて
いつか、ゆっくりみたいと思っていました


その絵は、エビハラブルーといわれる、青のきれいさ
かげをつかって、絵に表情をもたせる、そのくっきり感
なにより、対象の女性の透明感といっていい、美しさ
なるほど、とも思いました


有島生馬が、藤田嗣二が、その才能を愛して、かわいがった
という海老原さんの、絵をたっぷりみてきました
海老原さんの青をみたあとに、海をみれる
いい日曜日になりました